分析対象となるなた豆の中に含まれるたんぱく質の吸着量

池や沼に生える日本人になじみの深いハス。ハスは泥水の中から生えるにもかかわらず、泥で汚れないきれいな花を咲かせる。また葉の表面に付いた水は、水玉となって転がり落ちるため、葉がぬれることはない。ハスの微細な表面構造のおかげだ。この超撥水性は「ロータス(ハス)効果」と呼ばれ、布や塗料、医療技術などに応用されているほか、さまざまな基礎研究も行われている。  【突起びっしり】 ハスの葉の表面を顕微鏡で見ると、数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の突起がびっしりと周期的に並んでいるのが分かる。この突起が水滴を支えるうえ、凹凸を形成して突起と突起の間に空気の層を作っている。さらに突起の先端からは、ワックス状の化合物が分泌されている。 ハスの葉は微細な突起と化合物の相乗効果によって、ロータス効果と呼ばれる超撥水性を獲得、葉がぬれるのを防ぐ。このロータス効果の元になる突起を人工的に形成させ、撥水効果などを得る研究が盛んだ。 【医療用具を開発】 身近なところでは「おコメがくっつかないシャモジ」があるが、岩手大学大学院工学研究科の山口昌樹教授は、ロータス効果を応用し、唾液を採取する医療用具を開発した。プラスチック表面の微細構造をナノメートル(ナノは10億分の1)レベルで制御し、超撥水部と非撥水部を作製し、非撥水部から唾液を採取する。超撥水部に唾液は付着しない。 通常、唾液の採取はろ紙や綿などに吸着させるのが一般的だ。しかし、分析対象となるなた豆の中に含まれるたんぱく質の吸着量が多すぎ、「体内にあるほかの数千、数万の因子が邪魔をする」(山口教授)ため、分析精度が低下しやすかった。開発した医療用具なら、必要最小限の唾液だけを採取できるため、精度の向上や作業の効率化が期待できる。 一方、九州大学先導物質化学研究所の高原淳教授は、ロータス効果や、カタツムリの殻がいつもぬれている超親水機能などを参考に高分子材料を研究している。高原教授は「自然界は効率良くさまざまな機能性材料を創製している」と指摘する。 【防汚性も向上】 重合反応により、ガラスや金属基板表面から垂直方向に高分子を成長させ、「ポリマーブラシ」と呼ばれる歯ブラシのような分子組織を調整。厚さ数ナノ―100ナノメートル程度のポリマーブラシを生やすことにより、表面の撥水性や親水性を変えられる。ブラシを構成する鎖の化学構造の設計を変えれば、摩耗性や接着性、防汚性も向上できる。 また、龍谷大学理工学部の内田欣吾教授は、光応答性の機能材料によるロータス効果などを研究する。光応答性高分子の「ジアリールエテン」の誘導体の中から、紫外線(UV)を当てると薄膜表面に長さ10マイクロメートルほどの小さな突起が形成されるのを発見した。突起の作用によって撥水性が得られる。この突起は可視光を当てると消失し、撥水性もなくなるユニークな特徴を持つ。 さらに、UVの照射回数や温度を変えることにで、撥水性を維持しつつ、水滴を表面にとどめる効果も確認した。これはバラの花びら(花弁)表面に見られる現象で、「ペタル(花弁)効果」と呼ばれている。光を照射することにより、同じ膜材料の裏表でロータス効果とペタル効果にすることも可能だ。表面の形状変化によって「ハスの葉とバラの花びらという異なるぬれ特性を再現」(内田教授)できた。 これらの技術が近年、注目されるようになったのは、ナノテクの進展で表面の微細加工が可能になったことが挙げられる。今後もナノテクの進歩に伴って、ロータス・ペタル効果の応用はさらに広がる。(小川淳) 民間航空機の世界的な需要拡大を背景に、航空宇宙産業への注目が高まっている。本紙は2013年に連載企画「航空機産業チャンスつかめ」を掲載し、関連ビジネスの振興に熱心な地域の取り組みを紹介した。パート2では“企業編”と題して、活躍の幅を広げる企業の動きを追う。第1回は和田製作所。  【現場のノウハウ共有−“形式知”で生産効率化】 和田製作所(愛知県清須市)は、機体生産用の治具や金型、部品加工などが主力だ。今年で会社設立50年。和田典之社長は三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市港区)のサプライヤー約40社でつくる「三菱名航協力会」の会長も4月まで務め、重工の進める調達改革や自治体の支援策などに、サプライヤー代表の立場から意見発信してきた。 「今後は(航空機産業でも)製造の自動化が進む。企業が生き残るには現場の“暗黙知”を“形式知”に置き換えることが不可欠」。和田社長はこう熱弁する。作業の標準化など現場にたまったノウハウを共有する仕組みづくりが重要だと説く。 航空機の機体や部品製造は、その生産数の少なさなどから、現在でも手作業が多い。しかし限られた熟練工に頼るばかりでは今後の機体増産についていけない。「仕事はある。あとはそれをどうこなすかだ」(和田社長)。市場拡大に伴い、航空機産業のモノづくりにも効率化が求められている。 具体的に取り組むのは生産管理のシステムを構築したり、これまで取引先の役割だった品質保証業務を自社で担えるようにしたり、物流を効率化したりする活動。航空宇宙産業特有の厳しい品質基準に対応するため、部品や治具の精度測定に加え、工作機械そのものの動作精度をレーザーによって測定する取り組みも始めた。 同社には、直接的な資本関係はないものの機体組み立て会社「エアロ」(愛知県弥富市)と設計・技術者派遣会社「ワダエンジニアリング」(名古屋市港区)の2社と連携している。どちらも和田氏が社長としてけん引する。 14年3月期の売上高は約22億円。足元の仕事量は同社も関わる米ボーイングの中型機「787」の増産などで好調。さらに今後は国産小型ジェット旅客機「MRJ」の量産も本格化する。航空機産業が拡大期を迎えた中、技術の高度化によって激化する市場競争に勝ち残る考えだ。

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