まだ参事官だった宗像直子さん

数年前、経済産業省のある局長が「あの人は省の歴史を変えた人ですよ」と評したのが、まだ参事官だった宗像直子さんだ。実力ある後輩の話を聞かせてくれる経産官僚は少なくないが、中でもずば抜けた高評価だった▼その宗像さんが期待に応えて4日付で貿易経済協力局長に就任した。本省初の女性局長。しかも同期トップだ。世界貿易機関(WTO)一辺倒だった日本の通商政策を自由貿易協定(FTA)主導に転換させ、環太平洋連携協定(TPP)の原動力となった功績は省内外に知られる▼1984年(昭59)入省の宗像さんの前後は、日本の女性史にとって特異な世代と言えるだろう。86年に社会に出た“男女雇用機会均等法元年組”の大卒女性は、官民を問わず多くの“初”を経験してきた▼「女性である」という理由が主でチャンスを与えられた面がある。同期の男性からは、ねたましく見えたろう。しかしチャンスをものにしなければ社会人は大成しない。彼女らが今や多くの企業で役員適齢期にあるのは、実力というべきだ▼宗像さんは今後、事務次官や経済産業審議官の候補として注目されよう。どちらにしても実現すれば、同省の事務方として初の女性トップだ。いましばらく、彼女らの世代が歴史を塗り替え続ける。 安倍晋三首相の地元、山口県長門市の長門湯本温泉で、全国の温泉街初というスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)構想が進んでいる。バイオマスボイラとヒートポンプを組み合わせた熱供給システムを構築し、山あいの旅館11軒が利用する源泉を加温することで年間光熱費を20%削減する。生き残りをかけて“エネルギーの地産地消”に取り組む成果が注目される。 温泉街は全国に点在するが、箱根(神奈川県)や由布院(大分県)など一部の有名地を除けば客数減少や宿泊単価下落に悩む。長門湯本の場合は、これに加えて源泉が37度Cと低いため、いったん61度Cまで加温することが義務づけられている。大手旅館で重油を年24万リットル、2400万円程度の光熱費の負担になるという。2月には創業150年の老舗旅館が倒産した。 山口に隣接した九州には、由布院のほか黒川(熊本県)、別府(大分県)など個性豊かな大小の温泉地がある。宿泊施設の数も数軒から数百軒までさまざまだ。人気の温泉地には来訪客が押し寄せ、客単価は高い。一方、知名度で劣る地域は宿泊単価を下げなければ来訪客を確保できない。原油高騰による光熱費の値上がりが重くのしかかる長門湯本は、それだけでも不利な状況にある。 そこで環境コンサルタントのEECL(イークル=山口県下関市)が、新たな事業を進めている。年内に源泉加温のための熱供給システムを設置し、数軒の旅館で試用運転を始める。2―3年内には11軒すべてに導入を図る。最終的には太陽光や木質バイオマスなど再生可能エネルギーのコージェネレーション(熱電併給)発電で地区全体の需要をまかなう計画だ。2013年度経済産業省の「スマートコミュニティー構想普及支援事業」に選ばれており、この事業の中で環境と観光の両立の可能性を探る。 EECLはさらに、自営の電力ネットワークを構築して商用電力を一括受電する構想を持っている。旅館にはそれぞれエネルギー管理システム(BEMS)を導入し、地域節電所による需給情報の一元管理やデマンドレスポンス(需要応答)まで視野に入れる。実証の成否はエネルギーの地産地消を占う試金石になる。 ライフスタイルの変化に伴い、個人旅行のあり方も様変わりした。特に企業の慰安旅行や接待に依存してきた温泉地は、集客のための新たな投資やイメージ戦略が不可欠だ。しかし、まだ多くの温泉地は時流に乗り切れない。長門湯本が挑むエネルギーの地産地消という先進事例を県内外にPRすれば、来訪客増も得られる一石二鳥の策となる。 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉の第6回会合が7日、東京都内で始まった。3カ月ぶりとなる今回の会合では、JR東日本など鉄道会社の車両調達に関する外国企業の参入拡大や、EU側が求めるワインや豚肉、チーズなどの関税撤廃を議論する。今回の交渉は11日までの予定。 2013年4月の交渉開始から1年を経て、EUが協議内容をいったん検証。その上で先月、話し合いの継続が決まった。安倍晋三首相が目指す15年の大筋合意に向けて、双方がどこまで歩み寄れるかが焦点だ。 EUは、鉄道調達や政府調達の市場開放を要求。「パルメザンチーズ」など、特定地域の産品の商品価値を守るために名称の使用を厳しく制限する「地理的表示」についても、対象となる産地や品目の拡大を求めている。 物品貿易に関しては、日本は乗用車やテレビの関税撤廃を主張。既にEUと自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国の乗用車やテレビは関税が免除されるため、韓国製品との国際競争力の維持に向けてEUの譲歩を引き出したい考えだ。

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