金型の構成部品ごとにショット数の上限を設定

名古屋】トヨタケーラム(名古屋市中区、吉見淳一社長、052・223・3800)の金型の予防保全用情報管理システム(写真)が導入先で成果を上げ始めている。自動車用プレス部品メーカーの近藤工業(愛知県豊田市)では、金型の劣化や故障による不良品廃却コストが前年比40%削減した。 同システムはあらかじめ金型の構成部品ごとにショット数の上限を設定し、上限に近づくと自動で通知。適切な頻度で保全ができる。通常、金型は故障発生後に補修することが多い。予防保全をしている企業もあるが、ショット数などの情報を手打ちで入力・管理するため作業が煩雑になるという。 近藤工業を含む顧客からの要望を受け、トヨタケーラムが開発し2012年に発売。販売実績は数件にとどまるが、ようやくアピールの決め手となる“目に見える成果”があらわれてきたため拡販する。価格は200万円から。向こう3年間で累計1億円の売上高を目指す。 時計メーカーの業績が好調を維持している。2015年3月期は軒並み増益見込み。主力の時計事業は消費増税後の反動減が懸念されたが、影響は限定的だ。成長を確かなものにするため、各社が力を入れるのは海外販売。新店舗や宣伝活動への投資など、販売強化に向け活発な動きがみられる。一方、電子デバイス関連の競争激化などにより、精密技術を核とする多角化経営は転機を迎えている。勝ち残りのため、組織改革やラインアップの見直しなどが進む。2大メーカーの社長に戦略を聞いた。 《セイコーホールディングス社長・中村吉伸氏/人口増加地域を開拓》 ―時計販売の現状をどうみていますか。 「今期は消費税増の反動を想定し控えめに計画を立てたが、目立った販売減はみられない。計画数字を上回る可能性が出ている。海外については北米や欧州で健闘している一方、中国では景気停滞の影響を受けている状況。だが、総じて時計事業は順調だと言える。昨今、腕時計の価値があらためて評価されていることが、成長を後押ししている」 ―現状ではやはり国内販売が主力です。 「国内向けは堅調だが、人口が増えないだけに大きな伸びは期待できない。このため海外売り上げ増が急務。中国、米国、東南アジアなど人口増加地域の開拓を加速させる。大事なのは当社ブランドの認知度を高めること。広告宣伝には力強く投資していく。2015年度末までには現状で約5割の海外販売比率を6割以上に高めたい」 ―セイコーインスツル(SII)の会長に元東芝執行役専務の藤井美英氏を起用しました。 「主力の電子デバイス分野は、短期間で環境が劇的に変化する世界。一気に売り上げがゼロになることもあり得る。状況を的確に見極め戦略を策定できるリーダーを以前から探していた。藤井会長は半導体分野などで経験、人脈、情報を豊富に持っている。激しい競争を勝ち抜く体制が、これで整ったわけだ」 ―7月からシステム関連事業をセイコーソリューションズ(SSOL)に一本化しています。 「SSOLの決済システムやその他ネットワーク関連システムなどと、SIIが手がけていた無線技術、端末機器を組み合わせ、ソフトもハードも一括で提案しやすいようにした。成長が見込まれる分野であり、我々にとっては第3の柱。付加価値の高い提案で存在感を示していきたい」 【記者の目/経験・人脈をどう生かすか】 時計事業では昨期、全地球測位システム(GPS)で時刻情報を得られる光発電式腕時計「アストロン」の販売が国内を中心に急増。セイコーの新たな顔として海外でのユーザー層拡大も期待されるだけに、グローバルでの宣伝戦略が見どころだ。 また、第2の柱である電子デバイス事業では、車載、スマートフォンなど向け製品で国内外の需要を深耕する方針。SII会長に就いた藤井氏が東芝時代に培った経験、人脈をどう生かすかに注目が集まる。 《シチズンホールディングス社長・戸倉敏夫氏/ブランド確立に注力》 ―主力の時計事業は販売好調が続いています。 「日本、北米を中心に堅調。光発電式の『エコ・ドライブ』腕時計を前面に打ち出す差別化戦略が功を奏している。国内ではアベノミクス効果などで消費マインドが回復しつつあるのも追い風。また、欧州でもシチズンのブランド力が高まっている。中国は回復が遅れ、まだ厳しいが、日米欧の好調でカバーできている状況だ」 ―さらなる成長に向けて、どんな戦略をとりますか。 「日本、北米では今ある需要を着実に取り込む。一方、中国、東南アジアなどでは富裕層拡大により市場はさらに膨らむ見通し。内装を黒基調に統一した店舗『コンセプトショップ』の設置など、ブランドイメージの確立に向けた取り組みに力を注いでしている。中国で成果が出つつあり、今後東南アジアなどにこうしたやり方を移植していく」 ―13年に時計製造5社を統合しました。 「各社が個別最適で動いていたのを、全体最適に向かわせるのが目的。在庫の透明化などさまざまな面で効果が出始めている。例えば2月の大雪時には、交通の混乱で供給が一時的に滞ったが、在庫状況を素早く確認することで販売への影響を食い止められた。とはいえ、本格的な一体化はまだまだこれから。サプライチェーンの整理や技能継承などを進めていく」 ―多角化経営の強化も課題です。 「工作機械事業では政策効果などにより更新需要が高まっている。医療、航空機向けなどが堅調。小型旋盤での高いブランド力が生きている。このほか、自動車向け小型精密部品や照明用発光ダイオード(LED)なども伸びている。我々の強みがどこにあるかをしっかり認識し、そこに集中投資することが大切だ」 【記者の目/成長見極める眼力試される】 製造力強化を中期目標の一つに掲げるシチズングループ。主力の時計事業で国内製造会社を統合した戸倉社長の決断からは、目標達成への強い意志が感じられる。今後は本格的な融合をどれだけ進められるかが課題。企業文化を統一し一体感を醸成するには、リーダーシップの発揮が不可欠だ。 また、工作機械など他事業の収益向上も注力ポイント。時計に次ぐ売上高のデバイス事業では競争が激しく、トレンドの移り変わりも早い。それだけに、成長領域を見極める経営者の眼力が試される。

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